愚行錯誤その4(MRIと推理小説)と告知
診断と推理
皆様、めっきり「涼しさ」を通り越して「肌寒さ」を感じる毎日、いかがお過ごしでしょうか。私は、9月末に、去る内蔵系のトラブルで、CTスキャン2回、エコー診断1回、MRI1回を経験しまして、医療保険制度のありがたみをかみしめる10月となりました。3割負担でよかった。
MRIと『啓蒙の弁証法』
さて、皆様、MRI診断をされたことはありますか。私35年ぶりにこの診断を受けたのですが、過去の様子はすっかり忘れましたが、ひとまず検査用の服に着替え、専用の狭い診察ベッドに私の場合はあおむけになり、ぐるぐると固定のために縛り付けられるのです。そして、検査を行う担当の方の説明によれば。相当な騒音があるため、意思疎通が難しいので、指示を案内するためのヘッドフォンを付けなさいとのこと。「これから30分は終了までかかります」と言い残し、担当の方も所定のガラス張り別室に手機械操作が始まりました。ドーム状の検査機械に私を載せた診察別途が吸い込まれますが、、、、
「ダダダダダダダダダダダダダダ」、「ズビューーーン」、「コリコリコリコリ」…という音が大音量で繰り返し繰り返し一定のタイミングで発せられています。そして耳にあてがわれたヘッドフォンからは環境系のBGM。3曲流れましたが、一曲目は不明。世界の秘境系ドキュメンタリー番組でのテーマソングだったはず。2曲目がラヴェルのボレロ。この曲自体が10数分あるんですよね。そしてNHK『映像の世紀』のテーマソング、と、騒音に比べれば小さーな音で流れてきます。それと合間にはっきりとそして音量も大きく、「息を吸って、はいて、止めて下さい。(約20秒後)楽にしてください。」の録音アナウンスが流れました。
皆さんは、『啓蒙の弁証法』という書物をご存じでしょうか。1940年代末にアドルノとホルクハイマーというユダヤ系の哲学者たちによって記された、アウシュビッツという未曽有の非人道的惨禍を生み出した「ヨーロッパの知性」を根本から批判した難解な本です。私が学生時代に翻訳が出され話題になりましたが、この2章に、オデッセウスの冒険の印象深い分析があって、それはセイレーンという声音で人を惑わす人魚がいる海峡を渡るという場面の分析なのですが、オデッセウスは、自身と部下の舟の操舵者や漕ぎ手がセイレーンの声音に惑わされないように耳に蜜蝋を詰めさせるのです。そして、音が聴こえなくても船の送受ができるように部下たちに指示をあらかじめ出しておいて、オデッセウスはセイレーンの声を聴くために自分を戦場に縛り付けさせる。船は打ち合わせ通り無事海峡を通過して、オデッセウスはセイレーンの歌声を聞くことができ、そして声に惑わされておかしな振る舞いをしない(しばりつけられて動けないわけですから)まま目的地に着くという話です。
ヘッドフォンで耳にふたをされ体を縛り付けられて、健康診断という目的地に着くためには、何重にも縛り付けられるのだなと思料し思い出した次第。
そして、診断を受けたのですが、さすが専門医、検査の資料から、どういう状況だったのかを仮説を立て、非常に説得的に説明してくれました。ちょっとした推理小説の犯人捜しを聞いているようでした。そういえばシャーロック・ホームズ以来、作品の中に医者の登場する推理小説も結構ある気もしますし、実際に医師が推理小説に携わったりした例も多い気がします。
さて、それはともかく、皆様も健康には留意ください。
告知
さて、告知です。もう明日になりますが、10/31にまんのう町のnumarさんで行われる、ブックバザーに「書誌・床抜」として参加します。取り壊し前の駒場寮を撮影した大薄朋子さんの写真集『 #2001年の夏休み 』を発売いたします!。お楽しみに!。そして長野県佐久市で配布されている焚火とキャンプのためのフリーペーパーLanternも配布します(限定5冊)。こちらは、椎名誠、松本香織、吉川浩満、神田圭一、尾崎世界観、ちょいワル親父たちと小6が執筆陣という盤石な構えです。ご関心の方は是非。多分四国ではここだけかな。


【古本バザーのおしらせ】
日時:10月31日㈰11時
場所:季節をたべる食卓ぬまの庭
当日はぬまに所縁のあるイラストレーターや教授、蒐集家の方々が庭で古本を並べています。隣の百姓ミラクルが高瀬茶を淹れてくれてるのでお茶でも飲みながら秋のぬまの庭でユックリしてってください。誰かが読まなくなった本は誰かが読みたい本かもね
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